「ニーズが深い」を理解する
「ニーズが深い」商品とは、他の競合品があるにも関わらず「私はこれしか買わない!」と思ってもらえる商品のことです。ニーズが深い商品としてはタバコが挙げられます。愛煙家はブランドを変えるということをあまりしません。
私は学生時代に居酒屋でバイトをしていました。お客さんからタバコを買ってきてと頼まれる時は、空き箱を渡されて「これ、お願いね」とブランドを指定されていました。タバコのように、その人のこだわりが強く表れる商品のことを「ニーズが深い」商品と言います。
医薬品に当てはめると、これといった分野はありません。ニーズが深い医薬品に成る得るのは、競合医薬品がある全ての医薬品に当てはまるからです。ニーズが広い胃薬であろうと、ニーズが狭いオーファンドラッグや専門性の高い医薬品であろうと、ニーズを深めることは可能です。
ニーズが深い医薬品とは「その医薬品のファンである」ということです。その医薬品のファンである理由は医師によって様々です。医薬品を宣伝しているMRが好きなので、そのMRが扱っている医薬品のファンになってくれているのかもしれません。
また、他社医薬品と比べて効果が強いと感じているからファンになったのかもしれません。もしくはMRが医師である自分を何かとちやほやしてくれるから、そのMRが扱っている医薬品のファンになったという事もあり得ます。
自社医薬品のファンになってくれる要因は様々ありますが、いくつか具体的に記載してみます。
- 自分の処方ポリシーに合致しているから(Ex.副作用が少ない、相互作用が少ない等の使いやすさ)
- 医薬品のコンセプトに賛同しているから(Ex.長期にわたる有用性、QOLの向上を目指す等)
- コミュニティーの一員だから(Ex.自社医薬品のファンである教授のグループに所属している、自社の株を所有している等)
- 単純に使い慣れているから
- 自分にメリットがあるから(Ex.MRが自分を大切にしてくれる、演者として担いでくれる等)
上記のような要因が医師自身に当てはまれば当てはまるほど、自社医薬品のファンになってくれる確率が上がります。
ニーズを深める作業の具体例として、上記の要因以外に「他社医薬品の処方枠を自社医薬品の処方枠に置き換える」という方法があります。
例えば、胃潰瘍の適応を持っている胃薬が自社医薬品を含め3剤あったとします。A医師の3剤の使い分けは以下のようなものです。
- 自社医薬品(以下胃薬A):女性の患者さんに良く処方する
- 他社医薬品@(以下胃薬B):合併症の多い患者さん(高齢者)に良く処方する
- 他社医薬品A(以下胃薬C):小児の患者さんに良く処方する
そこで、A医師のニーズを深める為、胃薬B・Cの処方枠(胃薬Bは高齢者、胃薬Cは小児)を胃薬Aに置き換える作業をしていきます。
その為に必要なこととして様々ありませんが、まずは「胃薬B・Cの処方枠を胃薬Aに置き換える為には何が必要か」という医師の考えを理解する必要があります。
医師の考えを理解する為にいろいろ質問していくのですが、質問の例としては下記のようなものがあります。
- 「胃薬Bを高齢者(胃薬Cなら小児)の患者さんに処方する一番の理由は何でしょうか」
- 「胃薬Aを高齢者で処方すると仮定すると、どのような情報が必要でしょうか」
- 「胃薬Bを高齢者で処方しておられますが、どのような点が改善できたら尚良いと思いますか」
上記のような質問をして、胃薬B・Cの処方枠が胃薬Aに置き換わる為に必要な情報を集めます。その情報や考えに沿った提案をして、胃薬B・Cの処方枠を胃薬Aに置き換えていきます。
特に「胃薬Aを高齢者に処方すると仮定すると…」とか「胃薬Aを高齢者に処方しても良いかなと思って頂くとすると…」のように「胃薬Bの処方枠に胃薬Aを処方する前提」で質問すると良い情報を得られやすくなります。
仮の話でも良いので「胃薬Bの処方枠に胃薬Aを処方する」ことを考えるような環境を作ることが重要です。
ニーズを深める要因は数多くありますが、処方枠を広げる作業はMRのメイン作業になります。その付加価値として営業要素を加えたり、自分自身を売り込んだりしてください。
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